なぜクラブをJ1初昇格に導くのは”J2の名将”ばかりなのか?

今回の話も引き続き「どうしてJ1初昇格は難しいのか?」に関連するお話をしていきます。
前回の記事では、


J1未経験クラブは72クラブ中たった3つしか昇格していない。



その3つは、’13徳島、’14松本、’17長崎である。



ということでしたね。



で、この3つの成功例には共通点があります。
それは、3クラブともいわゆる”J2の名将”と呼ばれる腕利きの指揮官に率いられていたということなんです。
J2の名将というのは、J2リーグにおいて卓越した実績や豊富な経験値をもつ監督のことです。







◎地方クラブを初昇格に導いた3人の”J2の名将”





・2013年徳島ヴォルティス初昇格


2013シーズンに徳島ヴォルティスをPOの末J1に導いた監督は小林伸二監督であります。
この方は現在Jリーグの指揮官を務めている監督さんの中ではたぶん1,2を争う実績を持っているひとです。
J2における戦績をまとめておきましたのでペタリしときますね。


小林伸二



2002年の大分トリニータ、2008年のモンテディオ山形、2013年の徳島ヴォルティス、2016年の清水エスパルスと。
なんと4回もJ2クラブをJ1に昇格させた実績を持つという”昇格請負人”ですね。
J2での指導年数も7年で4クラブ経験しており、実績経験ともにトップクラスの人材であります。



・2014年松本山雅初昇格


2014シーズンに松本山雅を2位自動昇格でJ1に導いた監督は反町康治監督であります。
この方は小林さんと並んでJ2における実績では双璧をなす監督さんではないか?と思います。



反町康治



2003年のアルビレックス新潟、2009年湘南ベルマーレ、2014年松本山雅と3回クラブをJ1に導いています。
昇格回数こそ小林さんに一つ及びませんが、資金力のない地方クラブをJ1に導く監督としては現状最高の監督じゃないでしょうかね。J2指導歴は10年にわたり、計3クラブで確かな仕事を残しています。



・2017年 V・ファーレン長崎初昇格


そして最後に、2017シーズンにV・ファーレン長崎を2位自走昇格でJ1に導いた監督、高木琢也監督です。
監督としてのキャリアのスタートが横浜FC悲願のJ1昇格達成という華々しいスタートでありました。その当時から名将の呼び声高い方ですが、2009年から2017年にいたるまで継続してJ2で指揮をとっていた監督は高木さん一人だけであります。


高木琢也



高木さんは実績では先の2人に及びませんが、昇格したての長崎をPOに持ってきて、そこから隔年で長崎を上位に持ってくるなど、長崎での仕事はピカイチのものがあります。確かどっかのインタビューでご本人が「長崎にきて監督としてさらに覚醒した」みたいなことを言っておられたように記憶していますが、結果がそれを裏付けていますよね。



このように、
3つのクラブをそれぞれ初昇格に導いたのは卓越したキャリアを誇るJ2の名将たちであった
というわけです。



では、初昇格に導けなかったたくさんの他の監督たちはどうなのか?
もしかしたら監督としての能力が足りていなかったかもしれません。特に監督としてのキャリアをJ2でスタートさせるひとも少なくありません。最初からそうそうズバ抜けた結果を出せる人ばかりでもないでしょうし、リーグもそんなに甘くはない。
もしかしたらこの先名将に化けていく途中のひともいるかもしれません。
それからめぐりあわせや運といった人ではコントロールできない要素に仕事を邪魔された人もいたかもしれない。
きっと上手くいかない理由は細かく見ていけば数えきれないほどあると思います。
しかし、結果的にJ1初昇格達成したのは誰が見ても名将と思うような人材ばかりなんですよねぇ。
それこそのべ72名の監督がいて、たったこの3名だけが成しえているんですよ。





どうして多くの監督が実現できなかった初昇格の仕事を達成できたのは、こういった名将たちだけなんだろう?



これまではヒトについてのお話でしたが、ここでがらっとサイドチェンジしてカネの話に目を向けてみましょう。





◎人件費の格差、そして”王道パターン”と”名将勝ちパターン”






前回の話では、
J1経験クラブの壁が分厚すぎてほとんどの未経験クラブが跳ね返されてしまっているのが現状という話をしました。
それを裏付けるのがお金、資金力の差の部分であります。
ちなみに資金力=チーム人件費という扱いで話を進めますのでご了承くださいね。
あ、それからこれは基本的なことなんですがチーム人件費が多いほうがよりよい監督や選手をそろえられるということがあります。つまり、身もふたもない話ですがお金持ちは強く、貧乏は弱い、ということですね・・・笑
順位がかならずその通りになるわけじゃないですが、大筋でお金持ちのクラブのほうが上に行く傾向があるのは間違いないです。



まずは2013年徳島が昇格したときのデータを見てみましょう。
J1経験クラブとJ1未経験クラブの人件費の違いに注目してみてください。


2013シーズン人件費と順位21



2013年の徳島は人件費で5位につけるなど、J1未経験クラブでありながらいくつかのJ1経験クラブよりも豊富な資金力を持っていたクラブでありました。J1経験クラブの中には財政的にキツくなってきているところもあって、だいぶ人件費でランクを落としていたことも徳島のランクアップに影響しています。この年の徳島の昇格はあとにつづく松本、長崎の例とは実は違うタイプの昇格だと考えています。


クラブのかけられる人件費を増やしていくことで昇格に手が届くパターンなんですね。
自分はこれを王道パターンと呼んでいます。


なぜかというと人件費が増えるということ=クラブに入ってくる収入が大きくなることだからです。
簡単に言えば、
クラブの努力でより多くのお金を集められるようになれば強くなるよって話
ですね。




さて、お次は名将勝ちパターン。
まずは2014年の松本の例を見ていきましょう。
特に注目してほしいのは松本と人件費の上位ランクのクラブとの数字の差です!


2014シーズン人件費と順位2


この年もまだ札幌・福岡あたりはまだまだ建て直し中で本領発揮には至っていませんでした。
2014年の松本は人件費で9位につけていますね。
それにしても、13億とか10億、6億というチームを押しのけて4億4300万のチームで2位に入ってしまうのだから・・・自分はリアルタイムで松本が順調に勝点を伸ばしていくのを信じられない思いで見ていました。だってそんなこと可能なの??って話でしたからねえ。あまり知名度の高くない選手が多かったにもかかわらず、名だたる強豪をかき分けてストレートイン。
むちゃくちゃ悔しかったですが、地方クラブはこういう風にJ1に行くこともできるんだと強く刻まれた出来事でした。



そして最後は2017年の長崎。
ちょっと先に断っておかないといけないんですが2017年のデータが公開されるのは来年なので、参考記録として2016年の人件費をもとにしてあります。この数字は今年のじゃないのでご注意ください。
もうね、こんなの見りゃすーぐ長崎ヤバいってわかりますよ笑




2017シーズン人件費と順位2



2017年のころになるとJ1経験クラブで財政を立て直してきたクラブがぐっと増えます。
札幌なんかもそれで2016年に優勝しましたし、福岡も以前とは別のクラブのようにお金持ちになりました。
2016年の数字でいくと、長崎はたった3億3200万円のチームであります。
もしかしたらジャパネットの子会社化でお金が入ってこの3億3200万より人件費が増えている可能性もあるのかな?と思います。
しかし、メンバーを見てみると大方の編成はシーズンの初めに終わっているようですからジャパネットが関わる前の数字でチームの編成が成されているんじゃないかな?と推測されます。ってことは、3億3200万円からそんな何億も上乗せはないんじゃないかな?と思いますね。
それにしても・・・・19億とかさ、9億とかわんさかいるのに、どんだけ追い抜くんだよっていう・・・・・
なんだこれごぼう抜きじゃねーか・・・





この松本と長崎の例は、名将の手腕で人件費よりはるかに上の成績に到達したパターンだと考えています。
なので、これを名将勝ちパターンと呼んでいます。
この名将勝ちパターンは、
少ない人件費でも名将に任せるとたくさんの勝点を稼いで昇格できるよ
ってことですね。





◎なぜクラブをJ1初昇格に導くのは”J2の名将”ばかりなのか?





先ほど、「どうして多くの監督が実現できなかった初昇格の仕事を達成できたのは、こういった名将たちだけなんだろう?」という問題がありましたね。それの回答について私見を述べたいと思います。



松本、長崎のケースをみるとわかりやすいですが、初昇格を目指すクラブは基本貧乏です。
上を見れば「なんでJ2に?」というクラスのお金持ちクラブがたくさんいますから、そもそも不利な条件で昇格を目指さないといけないんですね立場的に。ということは、いろんなポジションにワンランク、いや下手したらツーランクスリーランク上の選手をそろえたチームがいくつもいると。そういうチームをバッタバッタと切り捨てて割り込まないと昇格は達成できないってことなんですよ。ましてや自動昇格なんて!
選手のクオリティ単品で勝負したらかないっこないんですよ。普通に考えると。
となるとチームとしての練度の高さであるとか、シーズンを通したマネジメントであるとか、その他諸々純粋な戦力以外の要素で格差をゴマかして勝っていくしかないと思うんですよね。
そしてそういう引き出しを存分に活用できるようになるには、やっぱり経験値が必要なんじゃないかなー?と。


プロクラブのトップチームを初めて率いる監督さんとか、J2を初めて戦いますという監督さんがそういった部分で簡単に渡り合えるとはやっぱり考えにくいんですよね。J2初監督で即座に昇格を勝ち取った監督さんもいるにはいるんですよ。湘南のチョウさんとか、福岡の井原さんとか。しかし、それもJ1経験クラブの話なんだよなぁという。



そういうわけで、J1初昇格に導く監督さんは”J2の名将”に落ち着いてくるのかな?というのが自分の考えです。





長々とお話してきましたがいかがだったでしょうか?
きっとこれからもJ2で華々しい戦績をおさめて名将の仲間入りを果たしていく監督さんが出てくることでしょう。
あ、そうそう言い忘れてましたがファジアーノ岡山は努力を重ねて人件費を増やしていますから、まさに王道パターンにのってるクラブであります。いつか絶対この努力が実る日が来ると確信して、俺は岡山の番を待つぞ!と思っております。
だから悔しいけどガマンするもん・・・・
最後に今回のお話のまとめ的なツイートをペタリして締めたいと思います。
最後までお付き合いいただきありがとうございました!



まとめ

このエントリーをはてなブックマークに追加

COMMENT 0